犬の椎間板ヘルニアからの回復
今回は椎間板ヘルニアを発症し、手術を乗り越えた仔のリハビリとその後の経過についてご紹介します。
まず最初は飼い主様が「後ろ足が立たなくなった」という事でワンちゃんを当院にお連れになりました。
10歳のミニチュアダックスちゃんで女の子です。
来院された時には後ろ足の痛覚はなく、排尿も自分でコントロールできない状況でした。
飼い主様と椎間板ヘルニアについての説明を行いつつ、この子に今必要でやるべきことをお伝えし、MRI検査へと進みました。
圧迫の程度はやはりひどく、翌日手術の流れとなりました。
やや高齢ながらも手術を無事乗り越えてくれ、圧迫物質も無事取り除くことが出来ました。
この子は手術前から自力で排尿できなかったため、尿道カテーテルを設置し、術後管理中に体が汚れないようにしています。
手術翌日は無理なリハビリは行いません。術野のアイシングや反射などを見て、本人の体調も見ながら行えるようであれば少しだけ反射を刺激するようなリハビリを行います。
手術3日後
リハビリを少しずつ積極的に行っていきます。
この子の場合、まだ反射の良化は乏しく、圧迫物質があった左側より右側である右後ろ脚の反射が少し良くなってきたと感じられる程度でした。
手術後1週間
右側の反射は強く出てきており、左側の反射も見られるようになりました。
自分では立つことが出来ませんでしたが、立たせてあげると5秒ほど姿勢を保てることが出来るようになりました。
手術後2週間
立たせてあげると10秒以上姿勢を保てるようになりました。
右足の反射はだいぶ良くなり、時折自分の意志で動かすことが出来るようになっています。
この頃から歩行の訓練を始めています。
自分の力ではまだまだ歩けることが出来ない為、装着しているハーネス残しの部分を釣り上げて歩行の手助けをします。
前肢は通常通り動かせるため、腰を浮かせてあげる自分で歩いてくれます。
この際に、後ろ足が少し地面に着く程度にしてあげると、反射が戻ってきている足は歩こうとして自分で動かしてくれます。
しかし、まだまだ体重をかけることもバランスを取ることもできないので、自力では歩けません。
自分で排尿のコントロールが少しずつできるようになりました。
術後1ヶ月
自分で立ち上がることが時々できるようになり、腰を釣り上げなくても自力で3~4歩歩けるようになりました。
まだバランスを取れない為、歩き出すとすぐ後ろ足から崩れてしまいます。
排尿は問題なく自分でできるようになっています。
術後2ヶ月
この頃からやっと自力でほとんど問題なく歩けるようになりました。
時折ヨロヨロとなったりしますが、自分の行きたい方向へ自分で方向転換ができるようになりました。
この子の場合、約2ヶ月で飼い主様との生活がほとんど問題なく過ごせるようになってくれました。
ただ、もっとゆっくり経過をたどる子もいれば、この子の半分ほどのスピードで回復してくれる仔もいます。
ワンちゃんそれぞれの回復の速度があるので、何が良い悪いとは言えないのですが、はやりリハビリに積極的・協力的な子ほど回復が望めるのではと思います。
リハビリは飼い主様も毎日して頂きたいことですが、なかなかうまくいかなかったり、ワンちゃんが嫌がったりするとうまく続けることが出来ない時もあります。
もしリハビリにお困りの際は、かかりつけの先生に相談してみてください。
大学病院に匹敵する獣医療の提供と飼い主様に徹底したインフォームド・コンセントしています。
大切な家族でお困りの際には、お気軽に相談ください。